NPO法人 東海つばめ学習会(無料塾)
東海地方で教育機会に恵まれない子どもたちへ学習支援を行っています。
無料塾の始め方
このページは、無料塾を始めたいと思っている人を対象に書いています。
どうして無料塾の始め方というものを公開したかというと、日本全体で学習支援を必要としている子どもたちが潜在的にいることを確信していて、現状の団体数では子どもたちの数をカバーしきれていないからです。
私が試算したところによると、学習支援ニーズのある子どもたちをカバーするために必要となる民間主体の無料塾の数は全国で1万教室です。
しかしながら、民間主体の無料塾は全国で100団体程度と言われており、無料塾が全く存在しない地域すらあります。
学習意欲があるにも関わらず、学習機会がないばかりに社会でパフォーマンスを発揮できないのは大変勿体無いことです。
以上のことから、NPO法人東海つばめ学習会が持つノウハウを余すところなく公開することこそが私たちに与えられた社会的な使命だと考えました。
そうすることによって、日本全体の子どもたちに学習支援を届けることに繋がるのであれば、これほど嬉しいことはありません。
「無料塾を始めたい!」
そういう想いを持って、手を挙げてくださる方を私たちは望んでいます。
2022年1月20日
NPO法人東海つばめ学習会
理事長 柿本知樹
無料塾を始める前に
今わたしが無料塾を始めるなら、下のようなことを気をつけて始めます。
客観性も取り入れていますが、どうしても主観的な意見が入ってしまいます。
文章に細心の注意を払っていますが、そのあたりはご理解の上お読みください。
・実際に運営されている無料塾を見学
無料塾を立ち上げるとき、みなさん必ず実際に運営されている無料塾を見学します。
もちろん東海つばめ学習会に来ていただくこと、いつでも歓迎しています。
その場合は下記メールアドレスまでお問合せください。
tokai.tsubame@gmail.com
東海つばめ学習会を立ち上げる際は、認定NPO法人八王子つばめ塾と春日井市内にある学習支援きみいろを見学しました。
前者の八王子つばめ塾は全国から見学者が来訪されており、そのモデルは各地域へ拡がっています。
ちなみに、私はもともと大学在学中にNPO法人阪神つばめ学習会の立ち上げに携わっていたので、運営イメージがあった状態で開始することができました。
なので可能であれば、お近くの無料塾で何度か学習支援経験を積んでから始められると、より具体的に考えられると思います。
・基礎知識を身に付ける
こちらの本を読むことをお勧めします。
全国の無料塾の事例や社会的背景について書かれています。
学習支援業界の全体像についてはつかめるはずです。
もし、余裕があれば森絵都さんのみかづきという小説も読んでみてください。
有料塾を経営する家族のお話なのですが、最終章には無料塾が出てきます。
それと、高瀬志帆さんの二月の勝者という漫画にも無料塾の描写があります。
中学受験をテーマに書かれた作品で、ドラマになったので有名かと思います。
作中で登場する無料塾は、東京都にある中野よもぎ塾がモデルになっています。
・行政委託と民間主導について
無料塾をするにあたって絶対に知っておかねばならない概念です。
まず、行政委託について説明します。
市町村が予算をつけて学習支援事業をしているのをご存知でしょうか。
そして、毎年その受け入れ先になりうる無料塾を選定します。
その無料塾にまとまった資金が用意され、学習機会を得るのが困難な子どもたちを行政担当者が選定し無料塾へ送り出すというシステムです。
こちらのメリットは、実際に困っている子どもをピンポイントでアクセスして支援の手を差し伸べられるところです。
さすがは行政ネットワークの力によるところです。
加えて、経済面で困ることがありません。
なぜなら、行政から資金援助を受けて成り立っているからです。
では、行政委託で「無料塾をやりたい!」と思っても、そう上手く実はいきません。
委託に際し、条件があるからです。
市町村によって違うかと思いますが、例えば法人格を持っていることや活動実績があることなど。
一朝一夕で始められるものではありません。
そうなると、最初は誰もが民間主導で始めることになります。
これは、会場を決めたり子どもを集めたり資金を調達したり私たちが主体的に取り組むことです。
最大のメリットは自由性が高いことです。
自身でコンセプトを決めて運営することができます。
例えば、行政委託の場合は受け入れ生徒を指定されるので、それ以外の子どもを運営の判断で支援できないのです。
ただ、難点があるのは経済面です。
民間主導の場合、まとまった資金援助があるとは限りません。
こちらに関しては、費用負担を下げる方法や資金調達の方法をお伝えしていきます。
ちなみに、東海つばめ学習会に関しては自主性を重んじるため、民間主導型スタイルで今後も走り続けています。
しかし、それは行政委託を否定している訳ではなく、誰が何をやるかというのはそれぞれの役割によるところなので、私たちは民間主導という役割を全うする、そのように考えております。
・無料塾の軸
無料塾には様々な軸があり、そのどちらかに寄ってコンセプトを団体ごとで決定されています。
*教育的アプローチと福祉的アプローチ
*学習支援と居場所支援
*学力の向上と基礎学力の定着
勉強を教えることと居場所を用意すること、どちらを前に出したいかというのも考えます。
サードプレイスという言葉を耳にするかと思いますが、学校と家庭と別の第3の居場所という意味です。
居場所が子どもにとってセーフティネットになり得るということなのです。
また、学力の向上を目指している無料塾も存在しますが、基礎学力の定着をコンセプトに活動されているところが多いように感じます。そのようなところは、公立高校の合格を目標に掲げられています。子どものキャリア選択において私立高校への進学が難しいという前提条件があるため、15歳で社会に出るよりも経済負担の少ない公立高校進学へのサポートをするという考えで取り組んでいらっしゃるようです。
東海つばめ学習会では、愛知県が公立高校に受かりやすいという地域性もあって、自主性を尊重し学びたいを優先するスタイルを貫いています。
・会場を決める
この会場をどのような基準で決めるかは運営者の判断によるところです。
全国の無料塾団体を見ていると、公民館などの公共施設を使って運営されているように思います。
このメリットは費用負担が少ないことです。
市内在住者であれば割引があったり、社会活動であれば認定してもらえたりと優遇があるケースがほとんどです。
ただし、市と民間が共同運営している第3セクター施設に関してはその限りではありません。
これに対し、東海つばめ学習会は企業テナントや飲食店、組合事務所、お寺などを用いて学習支援をしています。
あくまで一つの考え方として、どうしてこの選択をしているかをご説明します。
それは費用面と手間の削減と教室の固定の3つから言えます。
例えば、企業テナントであれば平日月曜日から金曜日まで稼働し、土日は使われていないかと思います。
東海つばめ学習会は土日に開講するので、そのテナントを有効活用できるのです。
そうなると、費用面では低額ないし無償で使わせてもらえる可能性があります。
次に、手間の削減についてです。
公民館におけるデメリットの一つに予約があります。
この予約が非常に面倒なのです。
窓口に行ったり、紙を書いたり、これを毎週続けるのって大変かと思います。
そして、もう一つのデメリットは他の予約が入っていた場合に会場を変更しないといけないことです。
日によって会場が変わると子どもたちは混乱します。
なので、曜日と時間と会場は固定することが望ましいと私は考えています。
最後に立地についてです。
大きく分けると、マクロ観点で電車沿線かミクロ観点で小学校区のどちらかで肌感覚に合う方をみなさん選ばれています。
東海つばめ学習会はマクロ的な捉え方で電車沿線に設定し、地域によらず受け入れます。
小学校区でやる場合は近所の子どもたちが集まるという感覚です。
これは好みだと思います。
会場を決めるときには、周りの知人に「無料塾を始めたいんだ!」っていうことを是非話してみてください。
そうすると良いアイディアをもらえるはずです。
あそこにある会場なんてどうかなという提案も出てくると嬉しいですよね。
無料塾は必ず応援してもらえる活動です。
なので、自信を持って取り組んでいってください。
・ロゴを作る
正方形のロゴ作成はおすすめします。
簡単に言えば、アイコンのことです。
今後ホームページやSNSを運用する上で必要になるからです。
Canvaなどを使えば無料で作れます。
・ホームページ
日時や会場が決まったら、ホームページを作りましょう。
無料で使えてブログが付いているものがいいと思います。
東海つばめ学習会では、Ameba Owndを使っています。
難しいスキルが要らず、すぐに開設できます。
先ほども言ったようにブログの更新は絶対です。
私たちは全教室の活動報告をその日中にアップロードすることをモットーにしています。
なぜかというと、ブログが更新されることによって日頃活動している団体なんだと知ってもらえますし、そういうところに子どもを預けたいですよね。それに、子どもたちを無料塾に送り出している保護者の皆様がブログの更新を待ってくれているからです。その日に必ず更新されるというルールがあれば見る側としても安心感があると思います。
・Twitter / Instagram / Facebook
必要に応じて開設してみてください。
これらに活動報告を掲載していきます。
・LINE Official
東海つばめ学習会では生徒や講師とのコミュニケーションツールはLINE公式を採用しています。
団体名義のLINEをここでは作ることができます。
友達登録してもらっている人に一斉送信ができるので、次の開催案内を送れます。
・講師募集について
東海つばめ学習会で登録されている講師の方は9割以上がactivo経由で応募してくださっています。
日本最大級のボランティア掲示板です。
ここに想いを書いていくと、それに賛同した有志ボランティアのみなさまが集まります。
当時、登録するとすぐに応募が来ました。
その時のお一人が理事をやってくださっている奥村さんです。
・生徒募集について
立ち上げ当初から現在までずっと頭を悩ませている項目が、この生徒募集です。
東海つばめ学習会の場合、最初の生徒はTwitterで次の生徒はFacebookからの応募でした。
生徒募集でオススメ方法を3つご紹介します。
①クチコミ
小中学生の子どもを持つ知り合いに声をかけてみてください。
そこから応募が来る可能性があります。
まず、始める際は初回の教室に一人でも座ってもらえれば、それで無料塾が成立します。
②社会福祉協議会へ行く
それぞれの地域に社会福祉協議会が必ずあります。
社協の職員さんは地域の方々と繋がっているので、学習支援が必要な家庭を知っていて、紹介してくれる場合があります。
③最も効果的な方法
これは個別にお伝えします。
・資金調達について
始める前の段階で資金調達する方法は、一般的にクラウドファンディングです。
東海つばめ学習会が過去に行ったクラウドファンディングをご紹介します。
愛知県中の子どもたちに学習支援を届ける無料塾 *東海つばめ学習会*
CAMPFIREがオススメです。
無料塾は社会事業ですので、GoodMorningというサービスを使えば手数料を安く実施可能です。
どのような文章が良いのか、何をリターンに設定すべきかは様々なページで研究してみてください。
参考までに埼玉県狭山市にある狭山よつば塾のクラウドファンディングも掲載します。
埼玉県狭山市の無料塾で中高生がより快適に学べる場を提供したい!
尚、クラウドファンディングの募集方式は2種類です。
All or Nothing方式とAll in方式があります。
All in方式を選びましょう!
All or Nothingは目標達成額に届かなければ受け取る金額も0円です。
All in方式は目標達成しなくても、集まった分は受け取ることができます。
ここまでやれれば、無料塾をスタートする土台が整いました。
無料塾を始めた後は
どのような理念で無料塾を運営したいか、人によって様々だと思います。
あくまで参考に、東海つばめ学習会の運営スタイルについて掲載していきます。
・教材について
拠点を持たないことから在庫を抱えないというスタンスであるため、教材は子どもたちに学校や宿題やテスト直しなどを持ってきてもらっています。
有料塾の型落ちテキストを寄付してもらうことがあるので、そういう時は自学用でお渡ししています。
・講師について
社会や子どもたちのために報酬なしで学習支援に参加してくださっています。
支援に入ってもらう前には無料塾の概要や社会的な背景、自分の想い、団体説明をします。
必ず聞くことは「なぜ学習支援をしようと思ったのかきっかけ」です。
このきっかけは様々あります。
理念に共感した、社会貢献をしたい、勉強を教えたい、子どもと触れ合いたい、交友関係を増やしたいなど。
どれが良い悪いではなく、その人が何を持って満たされるのか知っていなければ、継続的に携わってもらえません。
支援をし、子どもが満たされ、そして講師も満たされるというメカニズムでなければ健全ではないのです。
自己犠牲ではないからです。その点を意識して運営しています。
そして参加してもらう日程については、講師の皆様は余暇で来てくださっているので、こちらから何月何日に来てねということは言いません。
来たい時に連絡をいただけますかとお伝えしています。
よっぽど講師の人数が多くなれば、その日お断りすることも残念ですがあります。
・生徒について
東海つばめ学習会の場合は、参加条件を設けていません。
関東の団体では、所得証明を見せてもらうところもあるようです。
初回来てもらったときに簡単なヒアリングをします。
ヒアリングシートは毎回の担当講師がコメントを足しながら更新していきます。
必ずしも毎週同じ講師が担当する訳ではないので、すぐに引き継げる体制にしておくことが重要です。
・挨拶について
入室時と退室時は必ずこちらから元気な挨拶をするようにします。
そうすると、最初は引っ込み思案だった子も向こうから挨拶をしてくれるようになります。
・終礼について
始礼はしておらず、終礼をしています。
運営から報告連絡事項を伝えてから、講師のみなさんから感想を頂戴しています。
・無料塾シンポジウム
年に1回秋頃に無料塾シンポジウムというものが開催されています。
これは、全国の無料塾運営者が集まり、日頃の学習支援について報告し、横の繋がりを通して成長を図るものです。
NPO法人にするには
正直なところ、必ずしもNPO法人にする必要はありません。
任意団体のままやる方がいいかもしれません。
別の法人格を選んだ方がいいかもしれません。
結果として、東海つばめ学習会はNPO法人を選択しました。
メリットとデメリットを説明していきます。
メリットは、組織の継続性が担保されることです。
無料塾は代表のマンパワーで成り立っているというケースが多いことが課題で、NPOのようにシステム化されれば理事の数が必然的に決められるので、解散しない限りは人の入れ替わりで支援が継続していきます。
私が何かあっても続くようにNPOを選択しました。
もう一つは社会的な信頼度が高いからです。
NPOは透明性を非常に重要視していて、会計書類や計画書などの書類が義務付けられています。
これだけ全てを公開しているからこそ高い信頼を得られるのです。
寄付を得たり資金調達をしたりという観点から言えば、NPOを選択するのは合理的です。
一方、デメリットは手間が多いです。
認証においては半年程度かかりますし、たくさんの書類を準備します。
こちらの理解を念頭に、東海つばめ学習会がNPOになった流れを説明していきます。
*2021年01月
NPO法人化を決意し、資料を準備
*2021年03月
定款 設立趣旨書 予算書 計画書を作成
*2021年04月
愛知県との協議
*2021年05月
愛知県との協議
*2021年06月
追加書類の作成、設立総会の開催
実印と銀行印の作成
*2021年07月
あいちNPO交流プラザにて情報が縦覧
*2021年09月
NPO認証され、登記
【準備しておくこと】
・実印と銀行届出印の作成
ネットで作成するのが安く済みます。
当法人はハンコヤドットコムで注文しました。